夜明けの腐日記

「商業BL感想・雑談」ネタバレ注意!!

悪玉:吉田ゆうこ (感想)

悪玉 (Canna Comics)

《あらすじ》

高校生の森崎は、ほんの出来心でしてしまった
初めての万引き現場を社会人の羽良多に写メで撮られてしまう。
秘密にしてほしいと嘆願する森崎に、
「僕の言うことを聞いて、暇潰しに付き合ってくれるならいいよ」と
羽良多が"ゆすり"をかけてきて……!?
生きることに無気力な羽良多と、小さな罪を犯してしまった森崎。
うまく社会に適合できない二人の逃避行の終着地とは――

 恋なのかそれとも

1冊に2編の物語が収録されているのですが、毛色が違います。

どちらの話も言葉少なくストーリ展開されているのですが、表題作は静かで同時収録は素直でした。表題作は真意が明かされず、謎は謎のまま終了するので好みが分かれると思います。

私は吉田ゆうこ作品に合う合わないがあるのですが、『悪玉』は合う作品でした。ショート映画を観ている気分になります。

 

【ここからネタバレ】

悪玉

《攻:羽良多(社会人)・受:森崎(学生)》

魔が差し万引きをしようとしたところを写真に撮られた森崎は、黙っている変わりに羽良多からの要求に応えることになります。

映画に行ったり遊園地にいったりと健全な付き合いから、彼のものを咥えたりとギリギリなものまで様々です。

いつも会うのは平日で、森崎は仕事に支障が出ているであろう羽良多のことが気になりはじめています。脅されているにも関わらず、羽良多に対する感情が”愛”に変わっていく過程が見事でした。

どちらもはっきりとした言葉を使わないため、とても危うく脆い関係性。

彼らのバックボーンに関する情報はとても少なく、散りばめられた要素から推測することしかできません。この不透明な部分が物語により雰囲気をプラスしています。

森崎が家庭に問題があり、羽良多は過去の自分の行いに囚われてる。どちらも昇華することのできない問題を抱えたまま、2人の付き合いを続けていました。

あるとき羽良多の危うい部分に触れた森崎は、彼から開放されました。

別れ際まで不安定なままだった羽良多の姿は森崎の心に深く残り、結局”彼の手から逃れる”ことを放棄します。

まさに”共依存”。彼らだけの良い形に収まっています。

 

ノンフィクション

《攻:啓・受:文世》

若手俳優の2人がドラマを通して感情を交わしていく話。とてもぴゅあな恋の話です。 

同性愛がテーマのドラマに挑戦する過程で、うまく表現できない啓にアドバイスをする文世。練習として付き合ってもらううちに、いつのまにか啓は文世に本気になっていました。

撮影のオフ日に文世を買い物に誘ってみたりと、ゼロから始まる好意というのが初めてだった啓は探りつつもゆっくりと恋を進めていこうとしているようです。

文世もまんざらではないように見えますが...

ある日啓は、ドラマでうまく演じられるように文世に本気で恋するように仕向ける演技をしてくれとマネが頼んでいたという事実を耳にします。

ショックを受けた啓は、ドラマに準えながら文世を責めていきます。そこから逃げ出さない文世の心理はよくわかりませんでした。

最終的にドラマのクランクアップ当日、彼らは”役”を取っ払った本人同士として話をします。もちろんハッピーエンド。

めちゃくちゃに明るい話では無く、演技と真実の恋で悩む若者の脆い感情がほろほろと零れ落ちてくる話でした。

 

+α

描き下ろしは『ノンフィクション』の続き。

もうすっかり互いの間にわだかまりはなく、恋しています。可愛いです。

『悪玉』の後日談がないところがまた良いですね...あの2人の行きつく先を知っているのは彼らだけなんです。

 

最後に

 どちらの話も、恋愛感情をはっきりと描写しているというよりは、そこへ至る過程を濃く描かれています。

 人間の脆さとか危うさを織り込みつつ、自分たちの世界だけで完結する道を選んだ2人と、不安定さを乗越えて明るい道を選んだ2人の物語。

 答えのないしっとりした物語が読みたいときにおすすめです。

 

 

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